名古屋港水族館の企画展示「豊かな海をいつまでも~旅する水とめぐる海洋ゴミのいま~」を見てきました。海に流れ出る「海洋ゴミ」が生き物や自然に与える影響、そして未来のために「何ができるのか」と考える展示です。
そんな企画展示を見ながら「与えられてばかりの自分は何かできているのか?」と感じてしまいました。そこで今回は、企画展示から学んだことや感じたことを紹介してみようと思います。
生き物や自然のために貢献したい
唐突ですが、僕は生き物が大好きです。水族館や動物園の生き物たちに癒され、いつも楽しませてもらっています。
本当にかけがえのない存在です。
そんな生き物たちを好きになるにつれて、彼らが住んでいた故郷や抱えている問題を知りました。ふと思えば、生き物に会いに行くと、いつも与えられてばかりです。
だからこそ、今度は自分が生き物のために「何かできることはないのか?」と思いました。そのヒントを得るため、名古屋港水族館の企画展示を見に行ってきました。
海洋ゴミが海の生き物たちを脅かしている
この記事を読んでいる「たった今」も、海洋ゴミが海の生き物たちを脅かしています。
海に流れ出てしまったゴミ。その大半は、生活で不要になって「人が捨てたもの」。
そして海洋ゴミは、さまざまな要因で海の生き物を苦しめています。
海に漂うゴミをエサと間違えて食べてしまう
海の生き物たちは、海中に漂うゴミをエサと間違えて食べてしまいます。とくにビニール袋は、水中を漂うクラゲにそっくりです。
クラゲを捕食するウミガメのお腹の中から、ビニール袋が見つかることもあります。ビニール袋は体内で分解されず、体外へ排出できないことも少なくありません。
内臓の機能を妨げる原因となるケースもあり、最悪の場合には命を落としてしまうでしょう。
身体に絡まって動けなくなってしまう
海の生き物たちは「好奇心旺盛」です。海中に漂うゴミを見て「何だろう?」と興味を示します。
- 安全かどうか
- 食べられるかどうか
- 遊べるものかどうか
つついてみたり引っ張ってみたり、海では「見慣れないもの」をさまざまなアクションで確かめます。その結果、ビニール袋や釣り糸などのゴミが絡みついてしまい、身体の自由を奪ってしまうこともあるそうです。
海の生き物たちは、人間が扱う道具の使い方を知りません。移動できず、捕食もできず、最悪の場合は溺れ死んでしまうこともあります。
海洋ゴミは深海まで届いている?
海に流れ出たゴミは、ほとんどが海底に沈んでいきます。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査によると、海洋ゴミは深海6000メートルまで届いていることがわかりました。
- 車のタイヤ
- お菓子のビニール袋
- 大型家電
- たばこの吸い殻入れ
水温が低く、光の届かない深海では、プラスチックが分解されずに残り続けてしまいます。人間が深海に行くのは、とても困難です。
ゴミを処理することも生態系への影響を把握することも、簡単ではありません。ロマンのある深海が「実はゴミだらけでした」と知ると、ガッカリしてしまうかもしれません。
海洋ゴミが海を覆い尽くす未来
海の水は、長い年月をかけて地球上を巡っています。水温による密度の変化や風の力によって海流が生まれ、地球をぐるりと一周します。
そして、世界の海を巡るのは海洋ゴミも同様です。ゴミが集まりやすい海域「太平洋ゴミベルト」には、少なくとも7万9000トンの海洋ゴミが漂っていると言われています。
マイクロプラスチック問題
「マイクロプラスチック」と呼ばれる物質は、魚や貝の仲間、さらにはプランクトンやクジラの体内からも発見されています。
プラスチックが細かく壊れて、大きさが「5ミリメートル以下」となったもの。
小魚やプランクトンは、細かく小さなマイクロプラスチックをエサと間違えて食べてしまいます。そして、その小魚やプランクトンを捕食することで、さまざまな生き物の体内へ引き継がれているそうです。
海をさまようゴーストネット
漁業で使用する「漁具や漁網」も、海洋ゴミとして問題視されるケースがあります。廃棄された漁具や漁網は、大雨や台風の影響で海に流れ出てしまうこともあるからです。
幽霊のように海をさまよい続け、生き物の命を奪ってしまうことから「ゴーストネット」とも呼ばれています。
- サンゴにからみつき、傷つけて壊してしまう
- 海棲動物が危ないものと知らずに遊んでしまい、いつの間にか絡まってしまう
先日、地元のビーチクリーン活動に参加してきました。砂浜に打ち上げられたゴミには、大人が数人で引っ張り出すほどの大きな漁網もありました。
頑丈に作られた漁網は、簡単には分解できません。生き物にからみついてしまうと、さまざまな悪影響を及ぼします。
海洋プラスチックが魚の総重量を超える?
2016年の世界経済フォーラムでは、下記のような予測が報告されました。
現状のペースでゴミが増え続けると、2050年には海洋プラスチックの重量が「海に生息する魚の総重量」を超える。
報告書によると、世界のプラスチック生産量は、1964年〜2014年で20倍に増えているようです(年間3億1100万トン)。
そして、生産されたプラスチックから、毎年1000万トンが海洋ゴミになると考えられています。スキューバダイビングで生き物よりもゴミが目立つ時代が来るのかもしれません。
企画展示から学んだサステナブルな取り組み
最近話題のサステナブル(持続可能)な取り組みは、名古屋港水族館でも実施しています。僕自身も企画展示をとおして、海の環境を守るさまざまな取り組みを知りました。
サステナブルファッション
海洋ゴミとして問題となる漁網は、サステナブルファッションとして再利用されています。
「つくる」「使う」「捨てる」のプロセスが将来にわたり持続可能であることを目指し、海洋ゴミを再利用する取り組み。衣類やカバンなど、ファッションアイテムに活用している。
たとえば、漁網をカバンとして再利用するまでの道のりは、さまざまな企業の協力によって実現しています。
- 海から回収する
- 汚れを洗う
- ゴミを取り除く
- 糸や布にする
- カバンをつくる
海洋プラスチックゴミの問題解決に貢献する商品やサービスは、認定マーク「Product for the Blue」で確認できます。また、収益の一部は、海洋環境保全活動に寄付されています。
海洋生分解性プラスチックの実用化
海洋生分解性プラスチックは、水と反応することで細かく崩れる性質があります。そして、崩れたあとは微生物によって水と二酸化炭素に分解され、1年程度で完全になくなります。
この性質を活かして「日本で初めて」のレジ袋として実用化されました。従来の分解性プラスチックは、温度が低く微生物の少ない海洋では分解に何百年もかかるそうです。
手つかずの環境を守ることの重要性
企画展示は、名古屋港水族館に隣接する「南極観測船ふじ」にもありました。南極観測船ふじの展示テーマは、南極の環境を守ることの重要性です。
あまり馴染みのない「南極」のテーマに少し戸惑いましたが、展示を見るにつれて環境を守る重要性が腑に落ちました。
南極は人間の文明から遠く離れているため、排気ガスのような空気中の人工的な不純物が限りなく少ない環境です。手つかずの原生地域であることから、ありのままの環境測定を実施するうえで重要な場所でもあります。
そのため、南極ではエネルギー使用や物資輸送に制限があります。エネルギーをできるだけ使わず、廃棄物を出さない工夫が必要です。
自分にできることはないか考えてみた
名古屋港水族館の企画展示から、以下のことを学びました。
- 海洋ゴミが環境や生き物に悪影響を及ぼしていること
- 水族館や企業が環境を守るために取り組んでいること
名古屋港水族館では「海の豊かさを守るSDGsの目標」に向けて、生き物の展示をとおして情報発信しています。
つまり、名古屋港水族館の展示には「海の豊かさを守るためにできることを生き物たちから学んでほしい」といったメッセージが込められているのではないでしょうか。
そこで、自分自身の生活スタイルを振り返りながら、どうすれば「海の生き物に貢献できるのか」を考えてみました。
自分が住む場所をキレイにする
ほとんどの海洋ゴミは、大雨や台風の影響で「川から海」へ流れつきます。そして、その大半は人が捨てたものです。
- ペットボトル
- レジ袋
- 冷蔵庫やテレビなどの家電
- ソファーのような大型家具
道端に捨てられたゴミは、風に飛ばされ川に流され、知らぬ間に海へとたどり着きます。海の環境を守るためには、自分たちが暮らす町をキレイにする意識が大切です。
ゴミを正しく捨てるのはもちろんですが、捨てられたゴミを回収する意識も欠かせません。
自分自身の生活習慣を見つめなおす
自分の身の回りを見てみると、たくさんのプラスチック製品に囲まれているとわかります。
単体で見れば、気になるほどでもありません。しかし、ゴミ袋にまとめてみると意外に量が多くてビックリします。
プラスチックゴミを減らせるように、生活習慣を改善することも必要なのかなと感じました。
- プラスチック製品をできるだけ使用しない
- レジ袋はもらわない(エコバックを使う)
- ペットボトルやストローを使用しない(マイボトルを使う)
- ゴミを正しく分別して捨てる
- 認証マークのある商品を選んで購入する
ささいな取り組みかもしれませんが、自分にできる身近なことを地道に続けるべきです。
生き物と自然の保護に協力する
生き物や自然を保護する活動は、地域の身近な場所でも行われています。僕自身は「保護活動」と聞くと、専門家や有識者でなければ参加できない印象がありました。
しかし、実際はボランティアや学生が中心となり、比較的参加しやすい活動も少なくありません。
2000年に起きた鉱石運搬船トレジャー号の沈没事故では、流出した1000トン以上もの重油で、南アフリカに生息するケープペンギン約2万羽が油汚染の被害を受けました。
油汚染の被害を受けたケープペンギンを保護するため、世界中から1万人を超えるボランティアスタッフが集まったそうです。
活動の規模が大きいとハードルの高さを感じてしまうかもしれません。まずは身近な地域の活動から知ってみるのもよいと思います。
- ビーチクリーン(砂浜の清掃活動)
- 河川の清掃活動
- 野生生物の観察会
- タッチプールや磯遊びのレクリエーション
僕の地元ではビーチクリーン活動や生き物の保護観察を目的とする活動も実施されています。
SDGsに取り組むことでどんな未来が待っているか
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、社会の未来のため世界的に取り組まれている行動指針です。SDGsは17つの目標で構成されており、さまざまな企業や人々の協力により取り組まれています。
とくに目標14の「海の豊かさを守ろう」は、水族館や漁業関係者にとって大きなテーマです。しかし、SDGsの達成状況を見ると、まだまだ主要な課題が残っている現状です。
- 課題が残ったまま進んだ未来?
- SDGsに取り組んだ未来?
SDGsに取り組むことで「どんな未来に変わるのか」を考えながら、その重要性を確かめましょう。
多種多様な生き物と共存する未来
SDGsに取り組むことは、多種多様な生き物と共存する未来につながります。とくに海の豊富な資源は、人々の生活を豊かにするためには欠かせません。
海洋ゴミの問題によって海の自然は破壊され、生き物が住みづらい環境に変化しています。そして、海の環境悪化で困るのは、人々も例外ではありません。
- 船舶の運航を妨げてしまう
- ゴミを回収する手間が増えてしまう
- 衣食住に悪影響を及ぼしてしまう
「水の惑星」とも呼ばれる地球は、面積の7割を海が占めています。海をゴミ箱のように扱うことは、人間自身が住む場所を汚す結果につながるでしょう。
美味しい海産物を味わう未来
美味しい海産物を味わうためには、SDGsへの取り組みが大切です。豊かな海の資源を守らないと、海産物が食べられなくなってしまうかもしれません。
- 資源が枯渇してしまう
- 海産物の希少価値が上がり、手が届かなくなってしまう
水産業のSDGsの取り組みの一つとして、環境に配慮した持続可能な漁業・養殖場があります。そして、環境に配慮した持続可能な漁業・養殖場で生産された水産物には、MSC「海のエコラベル」やASCラベルなどの認証マークが付けられます。
MSC認証:水産資源と環境に配慮した「漁業」による水産物の証
ASC認証:環境と社会への影響を最小限に抑えた「養殖場」による水産物の証
持続可能な漁業・養殖業で生産された水産物は、商品に付けられたラベルで確認が可能です。
ラベルを目印に商品を選ぶことで、水産業の関係者だけでなく、消費者もSDGs(持続可能な水産資源の活用)に協力できます。
ささいな配慮に感じるかもしれませんが、一人でも多くの人に知ってほしい取り組みです。マイワシのように大群で動けば、取り組みに価値を感じてくれる人が増えるはず。
いままでのように水族館を楽しむ未来
海の環境が悪化すると、水族館に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。いままで水族館で楽しんでいた光景が、当たり前ではなくなるかもしれません。
野生下で数を減らした生き物たちは、水族館では容易に飼育できません。とくに最近では、水族館の人気者であるイルカやラッコの飼育も制限されつつあります。
また、水族館には「生き物と自然環境が抱える問題」を伝える役割もあります。海の環境が悪化すればするほど、水族館でも「悲しい現状」を伝えなければなりません。
水族館を純粋に楽しむためには、生き物や自然環境の「嬉しいニュース」を共有するのが理想です。海の環境のために行動することは、たとえ「ささいなこと」でも水族館の支えとなるはずです。
生き物と自然に恩返しするときが来た
SDGsというキーワードが話題になったことで、自分自身があまり意識していなかった環境問題に目を向けるきっかけが生まれました。水族館が好きで、生き物たちに癒されたり楽しませてもらったりしてきた僕にとって「恩返しするときが来たのかな?」とも感じました。
- 海の環境が問題を抱えていること
- 改善のため水族館が取り組んでいること
- 自分でも取り組める手段があること
名古屋港水族館で実施された海洋ゴミの企画展示は、さまざまなことを学び、意識する一つのきっかけでした。そして、あらためて自分の生活スタイルが「海の生き物にやさしいかどうか」を考えました。
コメント