南極ってどんな場所?「南極観測船ふじ」から学んでみた

先日、名古屋港ガーデンふ頭にある「南極観測船ふじ」を観覧してきました。博物館のような船内には、当時の乗組員たちの様子が再現されています。

  • 南極ってどんな場所?
  • 南極って何で寒いの?
  • 南極にはどんな生き物がいるの?

南極のことを学ぶにつれて、僕自身が意外に「何も知らない」と気づきました。南極がどんな場所なのか、ほとんど理解していませんでした。

そこで今回は「南極ってどんな場所?」をテーマに、僕自身が南極観測船ふじから学んだことを紹介します。

南極|地球上でもっとも寒い氷の大陸

南極は、大陸のほとんどが氷の層で覆われています。大陸面積は、約1,387万5,000平方キロメートル。日本の約37倍です。

氷の層の厚さ
  • 平均:1,856m
  • 最大:4,776m

東京タワー(333m)が何個も埋まるほどの高さです。

分厚い氷の総量は、地球上の氷の約90%を占めているそうです。人間が居住できる環境ではなく、地球上で「もっとも寒い氷の大陸」と呼ばれています。

南極とは、特大の氷に覆われた世界一寒い大陸。

南極が寒い理由

地球上でもっとも寒い大陸といわれる南極大陸。なぜ、そんなに寒いのでしょうか?

その理由には、以下の要因があるそうです。

  • 高緯度であること
  • 氷で覆われていること
  • 陸地であること
  • 周囲に冷たい海流が流れていること
  • 標高が高いこと

高緯度にある南極は、太陽光が斜めに当たります。太陽光の当たる面積が減るため、気温がそれほど上がりません。

  • 高緯度:赤道から離れている(緯度90°)
  • 低緯度:赤道付近(緯度0°)

南極大陸を覆う雪や氷は、太陽光を約80%もはね返します。

雪や氷で太陽光が反射することは「アルベド効果」と呼ばれ、晴れた日でも気温が上がりにくいそうです。

③陸地であること

海には冷たくなりにくい性質があるため、一般的には内陸部のほうが寒くなるようです。南極大陸は、内陸部が海から2,000km以上も離れています。

そのため、海の環境変化は、大陸の気温にほとんど影響がありません。海面に浮かぶ北極よりも、南極ははるかに寒いそうです。

④周囲に冷たい海流が流れていること

南極大陸の周囲には、2種類の海流が流れています。

外側・時計回り :南極周極流
内側・反時計回り:東風吹送流

暖かい海流との干渉が少ないことから、大陸が寒冷化したと考えられているそうです。

南極は、世界的に標高が高い大陸です。

最大標高:4,897m
平均標高:2,010m(世界一)

一般的に標高が100m高くなるごとに、気温は約1℃下がると言われています。

南極の気象現象

南極大陸では、極寒の地ならではの気象現象が発生します。

  • ブリザード
  • 蜃気楼(しんきろう)
  • 暈(かさ)と幻日(げんじつ)
  • グリーンフラッシュ

南極の気候が生み出す現象は、自然の怖さと美しさを教えてくれますよ。

ブリザードは、視界が失われるほどの強い吹雪です。南極では、年間50日ほどブリザードが発生します。

ときには風速が60m/秒を超え、視野がまっ白で何も見えなくなることもあるそうです(ホワイトアウト)。

蜃気楼は、光の屈折により虚像が現れる現象です。温度差によって大気密度の異なる層が形成され、層の境界で光が屈折します。

晴れて風の穏やかな日は、頻繁に発生するそうですよ(3~11月頃)。

暈(かさ)は、太陽の周りに光の輪が現れる現象です。「ハロー現象」とも呼ばれ、薄い雲によって光が屈折したり散乱したりして発生します。

また、太陽と同じ高さの左右にできる光は「幻日(げんじつ)」と呼ばれています。

グリーンフラッシュは、日没直前の太陽光が一瞬だけ緑色に輝いて見える現象です。

大気がプリズムのように太陽光を分散することで、赤や黄色より屈折率が大きい緑色の光だけが目に届きます。

南極の生態系

南極大陸(陸上)に生息する生き物は、ペンギン類や海鳥類、アザラシ類など、ごく少数です。

しかし、南極周辺の海中には、大型の魚類やウニ、ヒトデといった多種多様な生き物が生息しています。

種類生き物
アザラシ(5種類)・ウェッデルアザラシ
・ロスアザラシ
・カニクイアザラシ
・ヒョウアザラシ
・ミナミゾウアザラシ
アシカ類(1種類)・ナンキョクオットセイ
ペンギン類(5種類)・コウテイペンギン
・アデリーペンギン
・ヒゲペンギン
・ジェンツーペンギン
・マカロニペンギン
クジラ類(8種類)・シロナガスクジラ
・マッコウクジラ
・シャチ など
海鳥類(約36種類)・ナンキョクオオトウゾクカモメ
・ユキドリ など
魚類(約150種)・ライギョダマシ
・コオリウオ など
植物(2種類)・ナンキョクコメススキ
・ナンキョクミドリナデシコ
南極の生き物

南極の環境を保護することの重要性

南極は、日本から1万4,000km以上も離れた場所にあります。

名前は知っている。寒いことも知っている。

でも、それ以外のことは、ほとんど知らない。

遠く離れた南極について知る機会は、めったにありません。しかし、南極は地球の環境を保護するうえで重要な場所です。

  • ありのままの地球に近い環境がある
  • 海洋生物の重要な資源がある
  • 地球の環境変化を調査できる

ありのままの地球に近い環境がある

南極は人間の文明から離れており、人工的な化学物質の影響が少ない原生地域です。ありのままの地球に近い環境が残り、不純物の影響が少ない環境測定を実施できます。

また、昭和基地では環境への負荷を軽減するため、太陽光発電や風力発電が取り入れられています。南極観測船ふじの展示品は、南極での役目を終えたものだそうです。

  • 南極観測で発生した廃棄物は日本に持ち帰っている
  • 観測機器や車両などは博物館の展示に再利用している

海洋生物の重要な資源がある

南極の海には、さまざまな生き物が生息しています。とくにナンキョクオキアミは、総重量が10数億トンに達するそうです。

ナンキョクオキアミは、1匹ではわずか数グラムしかありません。

ナンキョクオキアミの総重量:10数億トン

人間(約60億人)の総重量 :約3.5億トン

世界中の牛を集めた総重量 :約6.5億トン

ナンキョクオキアミは、南極に暮らす魚類やペンギン、クジラなどのエサとなる貴重な存在です。隣接する名古屋港水族館では、ナンキョクオキアミを飼育展示していますよ。

地球の環境変化を調査できる

南極の標高3,810mにある「ドームふじ基地」では、円柱状の氷を掘削・解析しています。

掘削した氷「氷床コア」からは、雪の中に含まれる酸素同位体(※)の割合から、雪が降ったときの気温がわかるそうです。

酸素同位体とは

通常の酸素より重い酸素原子。

南極の氷は、長い年月をかけて降り積もった雪が地層のように積み重なっています。調査によると、18世紀の産業革命以降、二酸化炭素像度が高い値を示しているそうです。

また、化石燃料の消費が二酸化炭素濃度を増やし、気温の変化に影響しています。数十万年にわたる雪や空気の情報調査に役立つため、氷床コアは重要な役割です。

南極観測船ふじ|南極観測で活躍した砕氷艦

今回、南極について学んだきっかけは「南極観測船ふじ」を観覧したことです。南極観測船ふじは、南極観測のための砕氷艦(さいひょうかん)として、1965年から18年間活躍しました。

いまでは、博物館として名古屋港ガーデンふ頭に係留しています。4階建て構造の船内には、当時の様子がうかがえるような資料や模型が展示されています。

館内の写真は許可を得て撮影しています。

船内紹介①|食堂

食堂では、乗船員や観測隊員(約240人)の食事を提供していました。船内は火器厳禁なので、蒸気式や電気式の調理器具を使用していたそうです。

南極はとても寒いので、1日に必要な消費カロリーが日本の約1.5倍です。南極滞在中に不足しがちな野菜を補うため、厨房内には「もやし栽培機」もありました。

さらに、肉体労働が多かったため、高カロリーなアイスクリームが人気だったそうです。寒そうな南極でアイスを食べるのは意外でした。

船内紹介②|医務室

船内の医務室は、乗船者(約240人)の健康維持を担っていました。南極観測船ふじの航海期間は、約5ヶ月と長期にわたります。

専門医が同行し、診療・健康診断・衛生教育に携わっていたそうです。棚にはたくさんの薬品が並び、手術できる設備もありました。

船内紹介③|理髪室

「予約制」「料金無料」で散髪できる理髪室もありました。手先の器用な乗組員が理髪師を担当していたそうですよ。

担当者は、出航前に特別訓練を受けただけの素人。でも、技術はピカイチとのこと。

船内紹介④|士官寝室

士官寝室は、幹部(艦長以外)の居室です。

  • 2段ベッド
  • ロッカー
  • 洗面台

上記のような設備がある部屋を、2人で1組で使用していたそうです。勉強机のように書類が並んでいますね(航海日誌をつけていたのかな?)。

航海日誌

航海日誌には、1日のスケジュールが記されています。海上自衛隊では、5分前に準備を終える「5分前精神」の規則があったそうです。

船内紹介⑤|居住区

一般乗組員の寝室となる居住区には、3段ベッドが並んでいました。船内は波で傾くことがあるので、ベッドには落下防止のベルトが備えられています。

船内は最大で45度も傾くことがあるそうです。船内を観覧しているときも、微かに波の揺れを感じました。

南極新聞

船内では「南極新聞」が発行されていたそうです。南極新聞は、さまざまな情報の共有に活用されていました。

  • 航海情報
  • 経済・軍事情報
  • レクリエーションの共有

お正月に発行された南極新聞が展示されていました。発行所は「南極新聞社」だそうですよ。

南極のことを少しだけ知ってみよう

南極は日本から遠く離れた場所にあるので、知らないことがたくさんあります。しかし、多種多様な生き物が暮らし、人間の手が加えられていない自然が残る大切な場所です。

現在は博物館となった「南極観測船ふじ」では、南極の環境や観測の歴史について学べます。「名前は知っているけど、どんな場所か詳しく知らない」って人は、ぜひ足を運んで見てください。

営業時間9:30~17:00
定休日毎週月曜日
入場料大人:300円
小中学生:200円

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